名古屋フットボールクラブの20年におよぶ歴史の中で考え続けてきたことがある。
「サッカーを上達させるために何が一番重要か?」
サッカーにおいても守備のプライオリティーなど色々な優先順位がある。
13歳でジュニアユースに入ってきた選手に対して最初に着手することは、“その気にさせる・本気にさせる”ということから始める。
“その気にさせる”ということはどういうことか。
何歳からかわからないが、幼稚園か小学校低学年からサッカーを始め、お父さん、お母さんの協力を得ながらサッカーという競技に夢中になってきて、大会に出て勝利し喜び、負けて涙し、その中でひたすらトレーニングをする選手もいれば、何となくサッカーをする時間を過ごす選手もいる。
ほとんどの選手がボールを買ってもらい、リフティングから始まり、10回、30回、100回と目に見える結果に喜びトレーニングを重ねる。しかしながら、サッカーを始めてしまうと意外と“個”のトレーニングはおろそかになる。
何を努力すればいいのか?
努力のレベルは人それぞれ、この現状をいかに把握し、できればそれぞれにアドバイスをしながら、“何をどれだけ努力すれば”上をめざすことができるのかということを徹底して教える。
これが“その気にさせる・本気にさせる”ということである。
“何を”という中身はそれぞれのクラブや指導者のノウハウであり、努力の基準は、チームが歩んできた歴史やプロセスに隠されている。このような重要なことを、まず持って論理的に話をし、日々のトレーニングの中で頭の中と心の中に徹底して印象付けるところから13歳は始まる。
勉強に取り組むことにしても、同様に考え方と取り組み方を徹底して説明する。
全般的に、自ら進んで勉強する子供は少ないと思われる。一般的な光景として、お母さんの「勉強しなさい」という言葉から始まり、「早く塾行かないと遅れるわよ」という日常的な会話が始まり、しぶしぶ?勉強机に座り、しかたなく?塾に行く。ここでお母さんはひとまず安心する。しかしながら、成績は一向に上がらない。
最近の塾も昔とは違い、それぞれの個性を尊重しながら個別指導をするタイプも増えてきたと聞いている。昔ながらの授業体系のところでは学校の授業と同じで、ためになるかしっかり飲み込めているかの個人差ははっきりと出てくると思う。
サッカーにおいても同様の現象になる。
同じトレーニングをして、同じだけの時間を共有していても上手くなる選手と、いつまでたっても成長が乏しい選手がいる。
サッカーは反復で覚える動作やボールコントロール系、考えながら動く動作、考えながら動くポジショニング、状況に応じた判断、それもすばやく判断をするなど、一見動きは同じでもしっかりと頭の中が働いた上での判断・動作なのかを指導者が見極められるかことが大切である。
このような観点と視点でトレーニングを進行できるか?
全ての指導者ができるはずもなく、ただこういう論理をしっかり持っているかどうかの3年間はとてつもなく大きな差になってくると考える。
名古屋フットボールクラブは“その気にさせる・本気にさせる”ことから始まり、世界やプロに行っても困ることのないノウハウを惜しげもなく伝授する。コーチングスタッフにも、どのように選手たちをサポートするのが良いかを毎日考えさせている。
その積み重ねが、名古屋フットボールクラブ出身選手が全国の高校で少なからず活躍し、更に11名がプロ選手になったという結果に表れ、3年間の重要さを証明していると自負している。
小崎 峰利